であればこそどんな風に生きていけばいいのだろう?

松家仁之さんと出会ったのは、「火山のふもとで」だった。そうか僕はこんな世界が好きだったのだと気がつかせてくれたのが松家仁之さんだった。松家さんの世界はひとことで言えば透明で静かなのだ。「火山のふもとで」は浅間山麓の夏が舞台でなんとも清々しい世界だった。そして今回の「光の犬」は北海道の東部にある田舎町だ。そこには農業学校があって小さな教会があって薄荷工場がある。そんな町に育った一惟くんは京都の大学で神学を勉強していて、歩さんは札幌の大学で天文学を勉強している。松家さんの世界はいつも道具立てが現実離れしているけれどでも決してなくはない世界だ。一惟くんと歩さんが育む物語もやっぱり静かで透明で気持ちがいい。でもそんな透明で清々しい世界に少しづつ少しづつ影が射してくる。この本はある家族の3世代100年の物語 なのだけれど、ゆっくりと終焉に向かう。光が溢れていた世界にだんだんと日が落ちるように閉じていく物語だ。どんな物語もいつか終焉を迎えるのだけれど、であればこそどんな風に生きていけばいいのだろう?という小説だった

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